看護師の教育年限が4年に延長か?
看護師になるためには、
- 4年制の看護大学
- 3年制の看護短大や専門学校
を終了して、看護師国家試験に合格する必要がありますが、
日本看護協会は、看護教育を4年に延長するよう政府に要望書を提出しました。
現在の看護教育年限は3年か4年
国内で看護教育を行っている教育機関には、
- 4年制大学
- 3年制の短期大学
- 3年制の専門学校
- 3年制の看護師学校
の4つがあります。
2年制の看護専門学校もありますが、目指せるのは准看護師で、准看護師の資格は廃止の方向性で検討されていますので、今回は対象外にします。
すなわち看護師の教育期間は、3年~4年なのですが、4年に延長する要望書が出されました。
のいずれかを終了する必要があるのです。
看護教育が3年から4年に延長か?
2016年5月17日、日本看護協会(日看協)は、厚生労働省に対して、看護師養成の教育年限をの延長などを盛り込んだ要望書を提出しました。
要望書の内容は、
- 看護師養成の教育年限を4年に延長
- 特定行為に係る看護師の研修制度の推進
- 地域包括ケアシステム推進のための人材の育成
- 看護職員の確保・勤務環境改善対策の推進
- 医療機関・施設等における医療安全の更なる確保・推進
- 周産期医療体制整備の推進
などの6項目です。
看護教育の延長の必要性について
現在の看護師養成の教育は、2009年に看護師基礎教育のカリキュラムが改正されたことにより、
- 履修内容の追加
- 総時間数も3,000時間(以前より105時間延長)
と、履修内容と時間が増えたのですが、
日本看護協会は、看護教育年限を4年に延長すべき理由として、
- 教育の総時間数はほとんど変わらない
- 教育の過密化が一層進んだ
とし、
さらに、
- 1科目当たりの実習時間が激減した
- 実践能力を育成する教育時間が不足
との問題点を指摘しているのです。
このような教育時間の不足が、
- 新人看護師の早期離職
- 医療安全面でのリスクの増大
の原因にもなっていると述べ、
看護教育の抜本的な見直しは一刻の猶予もない状況
であり、
安全な看護に不可欠な教育内容を追加して看護教育の年限を4年に延長
することを要望したのです。
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国内の看護教育年限の変遷
先に述べたように、国内における看護師の教育年限は3~4年なのですが、どのような経緯でこのような年限に設定されたのでしょうか?。
国内の看護教育の黎明は、日本赤十字社が、救護看護師を養成するために、明治19(1886)年に、博愛社病院(現日本赤十字社医療センター)を設立したことに始まります。
明治23(1890)年に、生徒募集を10人と定め養成を開始しています。
日本赤十字社は、昭和初期には、入学資格を高等女学校卒業者とし、3年間の修業年限で救護看護師の養成を行っていました。
第2次大戦の終戦後にはGHQの指導で、昭和21(1946)年、日本赤十字社中央病院救護員養成部(現在の日本赤十字看護大学の前身)および聖路加女子専門学校(聖路加看護大学の前身)の共同で、「看護教育模範学院」が開校されました。
昭和22(1954)年に、「保健婦助産婦看護婦令」と「保健婦助産婦看護婦養成所指定規則」が公布され、看護婦養成はこれに基づいて行われることとなり、全国の赤十字病院内に設けられていた養成施設も「赤十字看護学院」と名前が変えられました。
昭和26(1951)年には、「保健師助産師看護師法」と「保健師助産師看護師学校養成所指定規則」の公布され、「赤十字高等看護学院」は各種学校になり、昭和50(1975)年には、学校教育法の改定に伴って「赤十字看護専門学校」となり現在に至っています。
専門学校の大学化も同時に進んでおり、昭和29(1954)年には日本赤十字女子専門学校が日本赤十字女子短期大学に、昭和61(1986)年には日本赤十字看護大学に昇格しています。
このように、日本における看護教育年限は昭和初期より3年制で、大学化ともなって4年制の看護教育も行われるようになったのです。
海外の看護教育の年限
海外の看護基礎教育の実態については、日本看護協会は2008 年 2 月に、 「諸外国の看護基礎教育と規制について」という、海外25 カ国を対象にした海外のアンケート調査に基づく報告書を纏めています。
看護師の教育内容や期間については、14カ国からアンケートの回答を得ていますが、
- 欧州ではEU 先導による相互認証の基準に準じて各国が教育制度を整えている
- カナダでは、看護基礎教育の 4 年制大学化が進んでおり、8 州 2 準州で大学教育のみが提供されている
- オセアニアの 2 カ国では、基礎教育は大学で 3 年間であるが、大学の教養課程に相当する教育を高等学校で実施
- アジアでは看護基礎教育を大学で実施する方向性がみられる
としています。
具体的には、
アメリカ
- 看護専門学校(3年)
- Community College(2~3年)
- 大学(4年)
- Accelerated Program (大学11~18ヵ月)
カナダ
- 看護専門学校(3年)
- 大学(4年)
フランス
- 看護教育施設(専門学校に相当)(3.5年)
ドイツ
- 看護専門学校(3年)
- 大学(4年)
イギリス
- Diploma(3年間)
- Degree(3~4年間)
以上、欧米の先進諸国でも看護教育は3年~4年のようです。
まとめ
現在、看護師になるには、3~4年の看護教育を受けて看護師国家試験に合格する必要があります。
日本看護協会は、2016年5月17日に、
- 1科目当たりの実習時間が少ない
- 実践能力を育成する教育時間が不足
として、看護教育を4年に延長するように厚労省に要望書を提出しました。
しかし、欧米先進国の看護教育も3~4年と、日本における看護教育がとりわけ短いわけでもなさそうです。
国内における医療関係の教育年限の延長は、獣医師(大学院利用の6年に)、薬剤師(4年制から6年制に)でみられますが、教育年限の変更は文科省の学校教育法の改定を必要とするためそう簡単なことではないようです。
看護師になりたいけど、
- 4年制の看護大学?
- 3年制の看護短大や専門学校?
と迷っている方には、経済的な問題がなければ、看護大学への進学をお薦めしますが、3年制の看護短大や看護専門学校に進学しても将来的に不利になるわけではありません。
多少の有利な点は有りますが、4年制を出たからと言ってを生涯を通じて優遇されるわけではありません。
看護師は、臨床の場でどれだけ有能に動くことができるかが勝負なのです。
看護師は国家試験に合格してからが勝負なのです。
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